そう、私は全巻揃っていた【からくりサーカス】を、なにをとち狂ったのか【うしおととら】と合わせて全部古本屋に売ったのだ。
とんでもなく後悔した。
漫画を買い直すかどうかの選択を経て、再購入と再読を果たした。
連載当時はキャラクターや設定で大混乱、雰囲気でしか読まなくなっていた。
しかし、自然に涙を誘う演出、深い感情描写、どれもが秀逸すぎて再読開始後はもう止まらなかった。
どんなに寝不足になろうとも、続きが気になってしまう。
複雑だと言われることもあるからくりサーカスだが、すべては“愛”に収束する物語。
うしおととら同様に感情移入と涙が止まらない。
複雑っぽくみえる設定をざくっと解決しよう。
※重大なネタバレなし。
1人の男の拗らせた愛情(執着)から生み出された人形たちと、人形を破壊する者たちの戦い。
サーカスと人形を軸に描かれる、バトル×人間ドラマの長編漫画である。
真の『愛』『笑顔』とはなにかを考えさせられる深い話だ。
たくさんの出会いと成長を経て、完成するのが【からくりサーカス】。
真の愛と醜い執着がぶつかる“笑顔の意味”を知る壮大な物語である。
1997年、週刊少年サンデーにて連載。全43巻
2018年10月には待望のアニメ化(全36話)
現在は多くの配信サービスで一気見することが可能。
▶関連記事:藤田和日郎の前作、あまたの“出会い”が世界を救う力となる!漫画【うしおととら】のネタバレなし感想は、こちら。
複雑に見えて実はシンプル!真の愛とは…なんなのだ?
すべては愛と執着から始まった。
たくさんのキャラクターを通じて成長する主人公と、こだわり抜かれた世界観が魅力。
複雑に見えて『核』はシンプル
からくりサーカスの複雑さは、大人気作品【HUNTER×HUNTER】の念能力や【呪術廻戦】の術式、死滅回游などのルールを理解し続ける難しさとは別の種類。
要するに『愛と執着』
- キャラクターの多さ
- 同じ顔をした別のキャラクター
- 転生を繰り返すキャラクター
- いくつかのキーアイテム
- ゾナハ病の起源
からくりサーカスから脱落するとき、このような要因の積み重なりが複雑に感じるようだ。
しかし、突き詰めればすべては『愛(執着)』に起因する。
複雑だと感じるすべての要因は、愛と執着で暴走したひとりの男と“サーカス”に繋がるのだ。
愛を拗らせた男の悪あがきだと思うと、実にシンプル。
一気読みで混乱回避
単純にキャラクターの多さが混乱を招く可能性もある。
だが、ひとりひとりのエピソードが丁寧に描かれるため、すぐに記憶から忘却されるようなキャラクターは少ないはず。
ちょっと力業だが、私は漫画を一気読みしたことで混乱しなかった。
43巻あるから読み終えるまでは毎日寝不足だが、読み終えた満足度は高かった。
記憶が薄れてしまう前に全巻読むことができれば、混乱を避けられるはず。
感情ドラマと“生き様”
からくりサーカスも、うしおととら同様にたくさんのキャラクターとの出会いが用意されている。
それでいて、ほとんどのキャラクターが重い背景を持っている。
さらには、うしおととら以上にご退場となるキャラクターが多い。
だから泣ける!というわけではない。
確かに、重たすぎる背景に同情に近いものが湧くかもしれない。
だが、描き方がやっぱり秀逸なのだ。
絶妙な表情や深いところまで描かれる感情と、ズドンと刺さるセリフ。
それらが心の奥を抉るのだ。
彼らの“生き様”に泣かされる。
私個人も、からくりサーカスで何度泣かされたかわからない。
フェイスタオルを持って読むことを推奨する。
敵ですら愛おしい!人形が教えてくれる『感情』
個人的に1番感情を持っていかれたのが、世間でも結構人気がある『最古の四人』だ。
“真夜中のサーカス”の危ない人形である。
そんなキャラクターですら、気付けば感情移入しているのがからくりサーカス。
彼らは“フランシーヌ人形”に忠誠を誓い、彼女を“笑わせるため”に作られた人形たちだ。
主人公側から見れば“敵”だが、個人的には最初からそこまで悪い印象はなかった。
- ドットーレ
物騒な人形のまま退場(可哀想に) - アルレッキーノ&パンタローネ
デザインは変わらないが、中身が人間に近づく - コロンビーヌ
作中でなぜかゴスロリ幼女にデザイン変更
そう、ドットーレは感動もなにもないままに退場となる。
そのほかの3体はとんでもなく人間に近くなり、泣かせてくる。
……ゴスロリ幼女はそれゆえに必須な変貌だったのかもしれない。
彼らが持つ忠誠心こそが“感情”の芽生えの鍵だった。
そして彼らが人間との関わりを経て“感情”を理解したとき、ついに私の涙腺ダムが決壊。
リョーコが木彫りの鳥を受け取るシーン。
彼らが安堵した表情を見せる瞬間。
ここは何度読んでも涙腺が崩壊する。
機械的だった彼らがここまでの感情を持つまでに至り、人間らしい表情まで見せるのだ。
とんでもない展開だ。
そんな表情(顔)されたら、納得するしかない。
だれよりも人間に近くなった彼らには、胸が締め付けられる。
キャラクター造形:コンメディア・デッラルテ
先述した『最古の四人』も含め、イタリア発祥の伝統的な仮面喜劇【コンメディア・デッラルテ】が元ネタになっているキャラクターが多数存在する。
コンメディア・デッラルテの登場人物は、それぞれ役割・性格・顔立ちが記号化されていて、多くのキャラクターは仮面をつけている。
『道化』『純粋』『哀愁』『狡猾さ』などの性質を“顔そのもの”で観客に伝えるのだ。
からくりサーカスは、これを元にデザインされたキャラクターたちが最高にかっこいい。
個人的にダントツなのが、あるるかんとオリンピアだろう。
この2体の戦闘シーンがまた派手で素晴らしい。
仮面のような顔と激しい動きのギャップ、画力の高さによる躍動感も際立っている。
緻密な伏線を綺麗に回収する構成力
長期連載で複雑な設定を扱いながらも、物語は終盤に向けて綺麗に収束する。
後付け設定と言われる部分もあるが、大きな破綻はなく読後感は非常に良い。
名言も多いし表現や見せ方、どれをとっても天才。
ときに熱く照れくさいセリフも含めて、少年漫画の王道を貫いている。
尺不足だけど作画は神!アニメ版
その当時、サンデーのCMでしろがねが「あるるかーーん」て叫びながら、あるるかん出してレザアマシオウして、コランかなんか繰り出していた。
だが、アニメ化には至らなかった。
しかし、ときを経て念願のアニメ化だ。
…だが、36話では収まりきらなかったようだ。
漫画では重厚な物語が描かれたのちに、仲町サーカスの一員となる猛獣使いのリーゼだが…
アニメでは、なぜかすでに仲町サーカスの一員となって登場。
ゆえに、リーゼと因縁の虎“ビースト”の話がカットされている。
ビーストが…終了!
リーゼの相棒であるライオン、ドラムは存在すら抹消されている。
尺の都合があるので仕方ないことだが、漫画を知っていると物足りなさを感じるかもしれない。
しかし、作画は丁寧なため見応えは十分。
あるるかんやオリンピアが暴れ放題なバトルシーンは迫力満点。
さらに、物語の核の部分についてはきちんと語られるため、一気見しちゃうくらいに楽しむことができた。
感情ドラマに向き合える?合う人・合わない人
★こんな人に合うかも!
- 深い愛の物語が好き
- 感情を覚えるキャラクターが好き
- サーカスの演目を駆使したバトルが見たい
★こんな人には合わないかも…
- 照れ臭いセリフやギャグが苦手
- 複雑な物語は苦手
- 感情的に消耗する作品が苦手
『からくりサーカス』まとめ
からくりサーカスはうしおととらとはまた違った話だが、壮大なドラマであることは共通している。
ゆえに、からくりサーカスも少年漫画の傑作だと思っている。
読み始めたらもう止まらないから、一気読みできる。
キャラクターもマリオネットも、ストーリーも全てが魅力的。
我が子にも読んでほしいと、ちょっと希望を抱いている。
刺さる名言も多いからくりサーカスは、きっと響くはず。
藤田先生の前作【うしおととら】もぜひ。



